《タイ》輸入青果物の残農検査に関する新ガイドラインが運用開始
2020年8月1日より、タイで輸入生鮮野菜および果物の残留農薬検査に関する新ガイドラインの運用が開始されます。対象となる品目は全種類の生鮮野菜および果物です。ただし、乾燥及び冷凍された野菜や果物は含まれません。 新ガイドラインでは、検出リスクに応じて輸入青果物を3つのカテゴリに分けて、残留農薬検査を行います。(輸出向け残留農薬試験についてもご参照ください。)その3つのカテゴリは、(1)非常に高い、(2)高い、(3)低い、となります。輸入に際して、タイ政府による残留農薬検査を受ける以外にも、別の方法として、指定の物質の分析結果証明書 (COA: Certificate of Analysis)を提示することで通関手続きを行うこともできます。
カテゴリ毎に通関方法や検査対象物質が異なりますので、輸出商品がどのカテゴリに属するのか事前によく確認されることを推奨します。(表1参照)
表1 輸入青果物のカテゴリ分けと該当商品及び通関方法
※1.表1は農林水産省の公布資料を基にラボノモリで作成
※2.「非常に高い」の場合、タイでの分析を行う場合は分析結果が出るまで商品が留め置かれます。(ただし、分析結果を待つことが出来ないと考えられる場合、商品留置に同意する旨を含む宣誓書を作成すれば、通関手続きに進めますが、その後、タイの担当官が留め置きを撤回してから流通が可能となります。)「高い」「低い」の場合は、タイ政府による分析の場合、「非常に高リスク」とは違い、留め置きは行われず、分析結果を待たずに通関手続きに進めます。
※3.タイ食品医薬品検査所が、2018年~2019予算年度に行ったサンプリング で、有害な残留農薬が検出された履歴があり、その割合が、それぞれの種類の野菜および果実サンプル数の20%超のもので、そのうち上位5位となっている品目
※4.タイ保健省食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)
※5.タイ政府が指定の簡易検査キットによる分析が行われ、その分析結果を待たず、通関に進むことができます。ただし、簡易検査の結果次第では、分析機関での政府指定134物質の分析に移ります。簡易検査キットの分析対象は、有機塩素系農薬、有機リン系農薬、ピレスロイド系農薬、カーバメイト系農薬。
さて、そもそも今回タイ政府が新ガイドラインを導入するに至った経緯ですが、一つは2019年12月27日にタイ政府の保健大臣が、国民が安全性の高い食品を消費できるようにとの健康分野の国家的目標を発表したこと、また、市民団体「タイ農薬警告ネットワー(THAI-PAN)」による調査で、残留農薬の国内基準値を超過した青果物がタイ国内で多く流通している事が明らかになったことも理由としても考えられます。ちなみにTHAI-PANによる調査の結果では、 4割以上もの商品で残農基準超過が発覚したそうです。
加えて、今回の農薬規制では同時に、パラコート及びクロルピリホス等の特定の農薬の規制強化も実施されます。2020年6月1日より、タイ工業省告示において、パラコート、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、パラコートジクロリド、パラコートジメチルサルフェート又はパラコートメトサルフェートの5つの物質の製造、輸入、輸出、移転、所有が禁止されており、併せて、国内製造された食品及び輸入食品中から、これらの物質が検出されてはならないとする保健省告示案が示されています。告示案が原案通り施行された場合、タイ政府が官報に掲載した翌日から運用開始となります。運用開始後は、上記の5物質については、食品中の残留基準値が削除され、国内および海外から輸入される農産物及び食品全てにおいて、検出されてはならないことになります。