RoHS指令とは、電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関するEUの法律ですが、中国においても同様の法律「电器电子产品有害物质限制使用管理办法(和訳:電器電子製品有害物質使用制限管理弁法)」、通称中国版RoHSが存在します。
2019年11月、家電を中心とする一部の電気電子製品カテゴリについて、中国RoHSをEU RoHSと同様の不含有要求とする「合格評定制度」が新たに開始されました。本制度により、対象リストに収載された電気電子製品については、政府が構築した公共プラットフォームに製品の遵法(適合)情報の登録を行う義務となりました。開始から半年が経った現在、公共プラットフォームには各社から約1万件の製品登録が行われています。
本特集では、この中国版RoHSの最新の要求内容について紹介をしていきます。
さて、まずはその基本要求事項について、EU RoHS の最新バージョンである改正EU RoHS (2)との対比で表1にまとめました。
はじめに、規制の対象物質とその含有制限量ですが、こちらはフタル酸エステル類4種を除いては改正EU RoHS 2と同様、つまり以前のEU RoHSと全く同じになります。(EU RoHS 2 は2019年7月22日からフタル酸エステル類4種が追加されたことで、最新の改正EU RoHS 2となりました。)
次に、対象となる製品になりますが、こちらも基本は改正EU RoHS (2)と同じで、「定格電圧AC1000V / DC1500Vを超えない全ての電器電子機器)」となります。
なお、どちらのRoHSにも軍事用途の設備などの適用対象外の機器はあり、その内容には幾らかの違いがあります。中国RoHSの適用対象外の製品は以下のようになります。
【改正中国RoHS 2の適用対象外となる電器電子機器】
軍事用途の電器電子機器・設備
発電所、送配電施設、給配電施設用の機器・設備、電気エネルギーの発生、輸送、分配にかかわる設備
特殊な環境下または極端な環境下で用いる電器電子機器・設備
国外へ輸出する電器・電子設備(もちろん、輸出先国や地域の有害物質使用制限規定に適合する必要はあります。)
一時的な輸入製品、または国内で修理を行うが販売はしない電器電子設備
研究開発用、テスト用の試験機
展示会、見本市などで用いるが、販売しないサンプル、展示品など。
注)上記機器用の専用付属品も対象外。ただし、汎用性があって別途販売を目的とするものは対象となる。
そして、ルールになりますが、ここに中国RoHSとEU RoHSで大きく異なる点があります。
EU RoHSの場合、許容濃度を超えて含有する製品の上市が認められていない、いわゆる不含有要求になりますが、これに対して現在の中国RoHSは不含有の要求ではなく、含有の有無を告知・表示することを要求しています。
つまり、含有をしていてもその旨を関係規則に従って表示していれば上市ができます。
ただし、ここが最も注意すべき最新ルールになりますが、2019年11月から、『一部の製品群』についてはEU RoHSと同じく不含有要求となり、上市に際して追加の手続き「电器电子产品有害物质限制使用合格评定制度(以降、合格評定制度と略)」が必要となりました。
この手続きについては、また後段で詳しく説明をしたいと思います。
上記の『一部の製品群』ですが、中华人民共和国工业和信息化部(MIIT)からの「公告2018年第15号」によって「电器电子产品有害物质限制使用达标管理目录(第一批)(以降、第一弾 管理目録と略)」として公布されており、下記の12の製品群になります。なお細かなリストは無く、該当するかどうかはEU RoHSのように自主的な判断が求められるようです。
【第一弾 管理目録】
1. 冷蔵庫 (ボックス型 800リットル以下)
2. エアーコンディショナ (定格冷却能力≦14000ワット)
3. 洗濯機 (洗濯量10kg以下で乾燥機能を含む)
4. 電気温水器 (500リットル以下)
5. 各種プリンター (印刷領域≦A3、印刷速度≦60枚/分)
6. コピー機 (印刷領域≦A3、印刷速度≦60枚/分)
7. ファックス (スキャン機能を含む)
8. テレビ (チューナーはTV用であれば含める)
9. モニター (LCDやCRTを含む)
10. マイクロコンピュータ (デスクトップ、ハンドヘルド、タブレット等)
11. モバイル通信・携帯電話 (GSM/GPRS、CDMA、CDMA1X等規格品)
12. 固定電話 (IP電話を含む)
また、これまでの中国RoHSは不含有要求であったため、EU RoHSのような適用除外というルールはなかったのですが、
この管理目録内の製品群は今後不含有要求となるため、「达标管理目录限用物质应用例外清单」という例外リストが公布されており、
本内容に該当する製品については、不含有要求の適用外となります。
さて、ここまで中国RoHS最新版の要求内容について説明をしてきましたが、実際の手続きや適用判断の流れについても情報が必要なところかと思います。
参考用ではありますが、ラボノモリで図1の中国RoHSの適用判断および手続きフローを作成しましたので、これを基に以下で説明を行っていきたいと思います。
まずは、前提として中国市場を目的として国内で生産或いは国外から輸入された電器電子製品が中国RoHSのスコープとなりますが、その際、上記で述べた軍事用や電力設備、販売を目的としないサンプル品などは対象外となります。
それ以外の電器電子機器については、「電気電子製品における規制物質の規制量要求(GB/T 26572)」に則して調査・検査を行った後、「電子電気製品有害物質使用制限標識要求(SJ/T 11364-2014)」に従って含有化学物質名とその量および含有部位等の表示を行います。
製品が管理目録の対象外あれば、これで上市へと進むことができます。
一方で、製品が管理目録の対象である場合は、ここから追加で合格評定の要求を満たす必要があります。
合格評定の手続きですが、MIITと国家市场监督管理总局(SAMR)が設置した电器电子产品有害物质限制使用 公共服務平台(以降、公共プラットフォームとする)に製品の適合性情報を登録する必要があります。
登録の方法は2つ用意されており、一つは第三者機関からの認定をもらう国推自愿性认证(自発性認証)、もう一つは申請側で仕様書や検査書などの関連資料を提出する自我声明(自己申告)があります。
自発性認証の有効年数は5年間で、以降は都度5年更新、認証を行った第三者機関が公共プラットフォームへの登録を行います。自己申告の場合、有効期限はありません。
現在、指定された認証機関は18機関存在します。
China RoHS認証機関を探す
図2に自己申告の際に提出できる技術サポート資料の種類を簡単にまとめています。
第三者機関による検査報告書、自社試験所による検査報告書、仕様書などをまとめたコンプライアンス文書の3種類になりますが、
提出する資料に応じて市場監督における抜き取り検査の優先度が異なるようです。
もちろん、第三者機関の報告書が最も信頼性が高く、市場抜き取り検査の優先度は低くなります。
市場抜き取り検査優先度が最も高いのはやはりコンプライアンス文書の提出のみの場合となります。
公共プラットフォームへ登録に関わる申告書や技術資料等は、すべて中国語簡体字である必要があります。
以上のように管理目録の対象である場合、公共プラットフォームへの登録を済ませ、绿色产品(CGP: China Green Product)マークを付けた製品だけが上市へと進むことができます。
以上、中国RoHSの最新要求の説明になりますが、現在中国政府は国内で活動する企業の信用情報の収集・公開を進めており(国家企业信用信息公示系统)、違反企業には厳しい罰則と社会的制裁が加えられる仕組みとなっています。
中国RoHS制度の違反についても、罰則や公開の対象であり十分な注意が必要となります。