ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことですが、昨今、企業経営のサスティナビリティ(持続可能性)を評価するという概念の普及と共に、飛躍的に拡大しています。
元々、ESG投資の市場は、2008年のリーマンショックで露呈した利益至上主義に対する反省や、2015年の国連のSDGs(持続可能な開発目標)採択等を材料に、この10年ほどで急速に成長を続けてきました。皆さんも、SDGsやESGというワードを聞くことが多くなったと思います。
図1に資源エネルギー庁が公表している《世界と日本のESG市場規模とその成長率(2016年と2018年の比較)》を載せていますが、ESG市場は2016年から2018年の2年間で、世界では1.3倍、日本国内においては4.2倍に増加しており、その市場規模は、2018年時点で、世界で約3000兆円、日本国内で約200兆円でした。
ここまででも、ESG市場が巨大化していることは十分に理解できますが、ここに去年、更なる追い風が加わりました。それが世界的な脱炭素化、カーボンニュートラルへ向けた始動です。
図1 世界と日本のESG市場規模とその成長率
2021年1月現在で、カーボンニュートラルを表明した国や地域は120以上に上りますが、この世界的な潮流の起爆剤となったのは、去年、2国で世界のCO2排出量の約43%を占める中国(約28%)と米国(約15%)が脱炭素化へ転進したことでした。
現在、図2に示すように各表明国がカーボンニュートラルの達成目標年と戦略を掲げています。
図2 各国のカーボンニュートラル達成目標年と戦略
このように世界各国の政府がカーボンニュートラルの達成に向け、環境重視の投資を促進していますが、これがコロナからの経済復興のキーとも捉えられており、脱炭素×経済復興を概念とした「Green Recovery」というスローガンが生まれています。
この潮流を捉え、政府の資金だけでなく、Covid-19で滞った民間マネーも一気にESG市場へ流れています。それを裏付けるデータとして、例えば、投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げる国連責任投資原則(PRI)というものがありますが、この取組への署名機関は2006年時点では世界でわずか63社だったのが、2020年には約3000社にまで増加しています。また、ESG関連の上場投資信託(ETF)への資金流入額も2019年12月時点では世界で20億USD程度だったのが、2021年2月には7倍超の150億USDとなっています。このように、従来の「持続可能な社会」に対する取り組みに、「カーボンニュートラル」「Green Recovery」の追い風が加わり、ESG市場は益々活況を呈しています。
さて、ではこの世界潮流に対して、日本政府はどのような戦略を立て、どのような未来を描いているのか?これについては続編「ESG市場に吹くカーボンニュートラルの追い風(後編)-日本が描くグリーン成長戦略-」で紹介したいと思います。来週の掲載を予定しておりますので、いま暫くお待ち頂ければと思います(次号へ続く)。
今回も最後までお読み頂き、誠にありがとうございました!
図1、2出典:資源エネルギー庁ホームページ
(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/carbon_neutral_02.html)
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